星 の て が み

ともに生きて

  久保  丈子[くぼ じょうこ]

 
 
 

砂まじりの冷たい風が吹き荒れる玄界灘。次々と出来る波の泡しぶきが、ちぎれ飛ぶ砂浜で
「ウォン! ウォン! ウォン!」我が家の海難救助犬、シャロームは、又々、発見してしまいました。
…傷付いた鳥を…。

場所をポイントし、ちぎれんばかりにしっぽを振り、こちらを見ては一声! 
ポイントした場所に戻っては一声!せわしなく動く彼に促され慌てて駆け寄ると、
そこには羽が折れて飛べなくなったカモが、テトラポットの陰にじっと身を潜めて寒風をさけています。

こんな時、彼(シャローム)は、決して、その鳥を傷つける訳でも無く、ただ々、共に歩いていた私たちを
「早く!早く!」と呼びつけ、「どうだい、僕が見つけたんだよ。すごいだろう! と、まぁ、それは置いといて…。
とにかくこの状況を何とかしてよ!」と、キラキラと瞳を輝かせ熱く訴え続けるのです。

こんな出来事は一度や二度ではありません。共に歩むパートナーは、彼(シャローム)の熱意?
に促されるまま、早春の冷たい海の中に分け入り、凍えながら鳥(アビ)を保護させられた事もあります。

そして、ある時は獣医師のもとへ、又、ある時は野鳥公園へと、いつの間にか彼の率いる
レンジャー部隊の一員として任務を遂行しなければならない私たちの姿がありました。

また、ある時は凍えて動けない雀の子どもを、鋭い牙で傷つける事無く「ふうわり」と優しくくわえ、
目の前にそっと連れて来た事もありました。

こんな風に私たちは、彼とともに生きる中で、野鳥たちとの、
そう希薄では無い関係を結ばせてもらったように思っています。

我が家の「海難救助犬」としての地位を確立させたシャローム。
そんな彼も、現在、御年14歳を迎える立派な老犬となり、昨秋より始まった
「たぶん脳腫瘍によるものだろう。」と宣告された突然のてんかんと戦いながらも、
日々暮らしています。

日に々に、自由の利かなくなる自身を戸惑いつつも受け入れながら、体調の良い時は、
大好きな車に乗って海へ出かけ、防波堤の上でパートナーの膝に抱かれて
波の香りを楽しんだりしています。

あと、どの位の時をともに生きられるか…本当に神のみぞ知る…ですが、
私の心の中には、彼が天へ旅立つ時には、きっと今までに救助してきた鳥たちが
道案内をしてくれる…。そんな小さな確信が芽生えています。