星 の て が み

生 き 物 と の 関 わ り

蛭 田 密 

机に向かって数字や活字を見ながら、難しい顔をするより、
池や河口・海で生き物の観察をする方が大好きな子供でした。

小学校3~4年生のころ、ポケット採集図鑑「水の生物」定価100円を、
父親からプレゼントされました。
学校の理科の教科書より遙かにおもしろく、夜遅くまで毎夜毎夜見ていました。
水の生物への興味は増すばかりです。

東京都内でしたが通学途中に多くの防火用水池や小川が多く、
東京湾の海までも10分程度で行けました。
給食のおかずが釣りに向いている物だと、食べずに残し早速目的地に向かい、
季節と場所によっていろいろ採集しました。
フナ・コイ・アメリカザリガニ(私たちは赤くて大きいのをマッカチンと呼んでいました)
・アシハラガニ・タイワンガザミ・マハゼ・アサリなどを採っては、
水槽に入れ、夕食も食べずズーット観察していました。

そして翌日の朝早く起き、棲んでいた場所に戻しました。
この様なことを何回も繰り返していました。
採集もどんどんエスカレートしていった春のある土曜日午後、
家からかなり距離のある多摩川河口まで、大人用自転車に三角乗りしてカニの採集に行きました。
潮は運良く春の大潮でした。河口のあし原に入って行くと一瞬ガサガサと音がして、
私が止まるとほぼ同時に音も止まりました。そのままにしているとまた、ガサガサと。
あちこちに穴があり手を突っ込むと、人指し指をグイと挟まれあまりの痛さに声が出ませんでした。
そういう時は手を引かないで、反対に突っ込みなさいと言われた事を思い出し、
20~30分悪戦苦闘し、カニを捕まえ、両足を伸ばしてみると
20~30センチ位の大型のアシハラガニでした。
大満足です。その後2~3時間奮闘し、40~50尾のアシハラガニを捕まえ、意気揚々と帰りました。

飼育観察する水槽がないので、風呂の水を抜き全てのカニを入れました。
カニたちがギシギシ・ブクブクといろいろな音を出し、今までにない楽しい観察時間が過ぎました。
私は部屋で横になっていると、「ギャー」という声で目が覚めました。
「何これ、どうしたの」父が帰り、前に正座したところ目的を聞かれました。
そして父からは1週間の期限付きの承諾が出ました。
本当にまさかで、楽しい1週間でした。
カニたちを多摩川河口に戻しました。
この1週間、我が家は銭湯通いでした。
父からもらった図鑑は今も私の本棚にあります。

  

プロフィール

1950年東京生まれ 
大学時代は動物学・海洋生物学を学び、水産会社勤務。 
その後水族館(静岡県・福岡県)で働き、 
2003年事務所を開き、アジアを中心に 海
洋生物のコンサルタントを行っている