星 の て が み

「空の鳥、野の花 」

荒井 献[あらい ささぐ]

 
 
キリスト教の教えでは、自然が人間の下位におかれて、
人間が自然を利用し尽くすことを正当化している、とよく批判される。

確かに、自然を人間の生活の手段とみなす生き方を裏付けるようにみえる
聖書の箇所があることも事実である。
しかし、少なくともイエスは、「空の鳥」や「野の花」を指して、
それを人間の今生かされて在る命へのアピールとして受けとるように勧めている。

例えば『マタイによる福音書』6章25~34節でイエスは、
今ここに生かされている人間一人ひとりの命のすばらしさを、 蒔かず、刈らず
倉に納めずに養われている「空の鳥」の命、 また働きも紡ぎもしないで養われている
「野の花」の命、 すなわち自然が自然のままで生かされて 在ることのすばらしさから
学んで生きるようにと説いている。

こうしてイエスは、人間の命を論ずる際に、その視点を自然に移して、
人間が自然に学び、自然に生きることを勧めている。

私たちはこの意味で、自然の美しい、すばらしい命の営みから、
私たち人間が今ここに生かされて在ることのすばらしさを学んでいきたいと思う。
  
 

プロフィール

1930年 秋田県に生まれる。

東京大学 教養学部 教養学科卒業、
同大学院人文科学研究科西洋古典学専攻博士課程満期退学
ドイツ・エルランゲン大学神学部留学、
Dr.theol.(神学博士)青山学院大学助教授、東京大学教授、
恵泉女学園大学学長を経て、
現在、東京大学・恵泉女学園大学名誉教授、日本学士院会員
 
[著書]
『荒井献著作集』全10巻、別巻1(岩波書店)
『イエスと出会う』(岩波書店)
『「強さ」の時代に坑して』(岩波書店)
『聖書名言辞典』共著(講談社)など、他多数。