星 の て が み

 

カワンセラーからの提言

山中 康裕[やまなか やすひろ]

 

 
私は、昨春、25年勤めた京都大学を定年で辞めた。 それを含む40年間を、
前半を精神科医として、後半を主に臨床心理士として、
子どもたちの心を守ることに身を呈して来た。

ところが、昨今起こる少年事件を見ていると、短絡反応を起こして、
すぐに死に直結した形で突出することが多く、暗滄たる気持ちになる。

一方、自然環境は破壊され、大気汚染や水質汚染がはなはだしく、
このまま行ったら、50年後の地球環境が危ない…との危機意識が起こってきた。
よって、私は、昨春から「カワンセラー(川のカウンセラー)」として、
川を守り、川と子どもたちとを繋ぐ仕事を始めたのである。

北海道の遠音別川、釧路川、石狩川、後志利別川から、 東北の北上川、雄物川を経て
九州の球磨川、 あるいは沖縄は西表島の仲間川まで、 あるいは、アイルランドのシャノン川から、
エジプトのナイル川、 果ては、中国の珠江など、国内外の36河川を回って
幾多の調査をし、 現地の子どもたちと接してきた。
 
 
つい先日などは、福井の九頭竜川で、 ドラゴンリバー・アンリミテドのご協力を得て、
上地の幼稚園児たちと、ヤマメの稚魚7000匹の放流に関わり、 放送大学の45分番組を
製作してきた。 その際、スタジオジブリのご協力を得た。 ご承知のように
『千と千尋の神隠し』で、オクサレサマや、 ハクのメタファーにより、
河川の神様すら病んでしまっている現状を、 果敢にも、千尋ちゃんが救っていくテーマは、
ベルリンでも高く評価されている。
  
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プロフィール

 

1941年生まれ。精神科医。
現在京都大学名誉教授、京都ヘルメス研究所所長。
京大教育学研究科の子どものための心理相談室で、
治療者として多くの子どもたちに接し、
後進の指導にもあたってきた。
またカワンセラーとして日本の川を訪ね歩き
子どもと川の接触をはかっている。

[著書]
『少年期の心』(中公新書)
『臨床ユング心理学入門』(PHP新書)
『絵本と童話のユング心理学』(ちくま学芸文庫)
『こころに添う』(金剛出版)
『魂と心の知の探究』(創元社)
『山中康裕著作集』全6巻(岩崎学術出版社)
『ハリーと千尋世代の子どもたち』(朝日出版社)
『表現療法』(ミネルヴァ書房)
『心理学』(翻訳、岩波書店)
『子どもの心と自然』(東方出版)
『子どものシグナル』(バジリコ)など多数。 

● 山中康裕氏へのアクセスは下記の方まで ●
〒611-0021 宇治市宇治字文字27-2 クレセント宇治408号  
       京都ヘルメス研究所

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