星 の て が み

『食べる』

   村田 香織[むらた かおり]
 

自然界では野生動物は彼らが起きて活動している時間の約8割を食べることに費やしていると言われている。
例えばイヌ科の動物は自然界では生きていくために捕食する。
捕食行動は、まず嗅覚を使って獲物を探すというところから、獲物を見つけ、追いかけ、
捕まえ、殺し、引き裂いて食べるということで完結する。

一方ペットである犬の食事は、飼い主から食器に入れられ犬に手渡されるや、
わずか3分程度で終り、残された一日のほとんどの時間を彼らは退屈して過ごすことになる。

その結果、犬は、いたずらや飼い主の気を引くための行動が目立つようになり、
さらには肥満にも陥りやすくなるのである。

また歯を使う機会も少ないため、歯垢歯石がたまりやすく歯周病にも陥りやすくなる。
歯周病は、口の中の不快感や痛み、口臭の原因になるばかりか、血流を介して細菌が腎臓、肝臓、
心臓など全身の臓器に運ばれて悪影響を及ぼし、犬のQOLを著しく低下させる。

動物福祉の5原則にあるように、動物がその種の動物らしく生きることは動物の権利でもある。
また、犬が生き生きと幸せに暮らす姿を見ることが、飼い主の喜びでもある。

犬らしい生活とは動くものを探し、追いかけ、捕まえ、引き裂くというような
犬本来の捕食本能を満足させる行動を含む生活である。そのためには飼い主が食事を与えるだけでなく、
毎日、散歩に連れ出し気分転換を図り、 適度な運動をさせ、おもちゃを使って一緒に遊んだり、
噛むものを与えたりする必要がある。

人も年をとるとよく食べることだけが楽しみだと言うが、犬もやがてはそうなる。
若い間にはできるだけ多くの楽しみを与えてやってほしい。
彼らの幸せは、いつも飼い主の手にゆだねられているのだから・・・

  
 

プロフィール

もみの木動物病院獣医師

イン・クローバー代表取締役
社団法人日本動物病院福祉協会 
しつけインストラクター養成講座委員会アドバイザー

パピーケアスタッフ養成講座講師
Veterinary Medical Network 行動学コンサルタント