星 の て が み

「ドイツ・朝市の風景」

    勢一 智子[せいいち ともこ]
 

南ドイツにある大学町コンスタンツに研究滞在したことがある。日々の楽しみの一つは、朝市での買い物だった。 近郊の農家や生産者が出店する朝市では、野菜,果物,花,チーズ,タマゴ,食肉,魚,パンなど、地元産の生鮮食品を対面で買うことができる。 
朝市は、旬の食材が主役となる地産地消の舞台である。 

春の訪れは,ホワイトアスパラガスで始まる。花屋の店先が華やかになってくるとチェリーや種類豊富なベリーが並び始める。それから夏にかけて,野菜と果物が彩り豊かに並ぶ。 

夏が終わる前に1年分のジャムを作るのがこちらの習慣である。やがて,日没が早まり,秋風を感じ始めると,プラムやりんごのシーズンとなる。 

各地でワインフェスティバルが催され,新酒のワインが出回る。有名なビールの祭り「オクトーバー・フェスト」のころには,かぼちゃと新玉ねぎが秋色を演出する。狩猟も解禁となり,鹿肉など野性味のある食材もお目見えする。 

秋が深まると,次のイベントはクリスマス。冬期には農作物の収穫が限られるため,出店数は半減するものの,クリスマスリースやツリー用もみの木の並ぶ特別な雰囲気が楽しめる。とはいえ,ドイツの長く寒い冬,年が明けると,春の足音-ホワイトアスパラガスの登場-が待ち遠しくなる。

ドイツでも,日本と同様,スーパーマーケットは非常に便利であり,世界中から集められた商品が豊富に揃い,季節に関係なく,欲しいものを手にすることができる。そうした環境にあって,なお,季節の訪れを心待ちしつつ地域とともに暮らすことは「便利」な現代では,求めなければ得られない。それは,とても贅沢なことかもしれない。 
(写真:ドイツ・コンスタンツ  ボーデン湖畔の美しい町を2007年の夏、筆者撮影)
  
 

プロフィール

山口県下関市生まれ。  

1998年九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得 
    退学。 
1998年より西南学院大学法学部に赴任,   
2007年より西南学院大学法学部・教授。 
2002~3年および2005~6年  
ドイツ・コンスタンツ大学法学部客員研究員 

専門分野は,行政法,環境法。